2007年1月 6日 (土)

プリオンさんへの再反論1 民営化の意義

 プリオンさんは、次のように言う。

「民営化しても税金がつかわれるようでは意味がない。予算削減をしやすくするためということなら有意義だが。」

 実は、私はこの前半には賛成なのである。費用の一部が民間企業の利益となりながら、税金を投入するということに疑問を感じるのである。「民営化」ではなく、民間が図書館をやることは一切、禁止されていないし規制もないのだから、利用料金を取ってでも、民間企業が自分たちで事業として経営すればよいのだ。そうすれば、民間企業が馬鹿な役所にああだこうだ指図されずに自由にやれるし、税金の不透明な使途が発生する余地もなく、市場原理に従ってサービスを行える。実際に、六本木ヒルズの図書館などはそうなのだから。
 後半が問題なのである。事実、いわゆる民間委託や民営化(指定管理者の民間団体や企業による運営)になった方が、予算は減る。なぜなら、そもそも、その範囲でやるというところを指定するし、また、競争入札なら安いところに行くのは当然だからだ。
 というよりも、もともと予算を少なくすることが民間委託や民営化の至上目的とされているのである。サービスの充実や専門性の向上などは本当は二の次である。あるいは、もともとサービス水準が低すぎるため、相対的にサービスが上がったかのように見えるということである。
 よくサービスの向上として夜間開館時間の延長や祝日開館があげられるが、そんなことは、体制さえ整えれば公営でもできるし、現にしているところも少なくない。
 すぐに、民間委託や民営化を「役所の側が持ち出す」のは、実は、役所側、公務員側、ときには組合側の怠慢や野蛮があるのだ。きつい仕事や勤務条件が厳しいのはいやだという、そういう根性、それから、役所当局側は、図書館なんぞに人員や予算を配分したくないという低い文化度、そういうものがあるからである。
 民間委託だの民営化だのを持ち出す前に、同じ人間がやれているのだから、公務員そのものが自身の効率化を追求すべきだ。民間の人に「公務員は非効率だ」と指摘されるのならまだしも、公務員自体が役所の報告書として、「公務員だと非効率なので、民間委託等を推進する」などと書いて、実際に、民間委託してみれば、役所の他部門に異動してしまったり、異動しなくても、仕事はみんな委託スタッフにやらせて、自分はラクをしているなどという現状が嘆かわしいのだ。もしかして、プリオンさんはこういう人か? 役人の人件費が高すぎるからだという人もいるが、それよりも、その高い人件費で、こういう無駄な報告書を書くのに多大な時間を使っていたり、また、タウンミーティングのやらせシナリオをつくっていたりするから、無駄が多いのだ。役所の無駄の本質はほとんどそういうところにある。だから、「○○改革」などという言葉遊びが流行るほど、こういう無駄は増える。というより、もっと悲惨なのは、無駄と知りつつ命令なので仕方なくやり、それで午前4時などという中央省庁の役人がいるということである。東大などを出たのに、レベルの低いことやらされて可哀想と思う。
 一方の委託スタッフのような格差の底にいる人々も悲惨である。図書館の職員になりたくて、自腹で司書の資格を(試験で取れるものではないので、相当高額かかる)取ったり、様々な学習会や研修にこれも自腹で参加している(ただし、こちらはそれほど高額ではないが、中身のあるものは高額なものもある)のに、結局、もしかすると、大都市及びその周辺のコンビニのパートより安いかもしれない時給800円前後、しかも何年やっても昇給もなしという状態でやっている。委託スタッフの場合、スキルもモラールも高い人の方が、同じスタッフのあまりのレベルの低さに嫌気がさしやめてしまう、または、かえって会社の目障りになりクビになるなどということもある。
 もちろん、委託を受ける企業でも良心的なところは、そんなにひどくない。しかし、あくまで、正社員ではなく契約社員だのパートでやっている人がほとんどである。チーフでさえそうである。さらに、そういう良心的な企業は、どうしても委託費が高くなるので、ただひたすら金を減らすことしか考えていない多数の自治体では、安い、本当に口入れ屋のような業者に委託しているのである。
 私はここに一番、怒りを感じている。
 儲けているのは、当のスタッフでもなく、ただ、人間を左から右にやっているだけの口入れ屋(人材派遣業だか何だかしらないが)なのである。
 そして、こういうところに、旧ゼネコン、悪徳商社、行政に癒着しているシンクタンクの連中がいかに多いことか!! 税金はこういう連中の搾取システムを通じて垂れ流しなのである。皆さんは、ご存じないかもしれないが、役所の企画部などというのは、実はパープリンで、お金はらってシンクタンクの人に毎日、家庭教師をしてもらい、宿題をやってもらっているのである。プリオンさんはこういうところの人なのだろうか?
 皆さんに警告する。
 はっきり言って、現政権の現方針下で(方針を変えれば、政権のいかんに関わらずそうではないが)、日本では司書に未来はない。図書館にもそんなに未来はない。学力低下問題も本質的には解決しない。その兆候をプリオンさんに見る。一見、知的なところもあるように見えるが、公共図書館がなくてもかまわないというところに、限界が小さい知性であるか、あるいは、大学などにいて、公共図書館がなくても不自由しない人であることが見て取れる。
 私はすでに図書館の正規職員なってしまっているから、なんとか命脈を保っているが、公務員制度の改革とやらで、クビ(分限免職)になる日も来るかもしれない。ただ、それでも、今までは、正規の職員だったから貯金もある(これも国家が破産すれば意味ないが)。
 委託スタッフになったら、貯金などできない。図書館の委託スタッフをやれるのは、裕福な家の子弟だけだ。
 だから、有産階級でもない人は、司書になろうなどと思わない方がいい。
 知らない人がいるようだが、どんなに勤務成績が良くても、委託スタッフや非常勤職員が、それによって、正規の常勤公務員にはなれないのである。そして、司書の常勤専門職公務員の採用試験を行っている自治体は圧倒的に少なく、また、その数も1人とか2人とか非常に少なく、倍率が200倍だの300倍だのという調子なので、頭がいいだけでなく運もよくなきゃ、もう無理なのである。
 それでもなりたい人は、どうか夢は2つ以上持って欲しい。そうすれば、もうひとつの夢は実現できるかもしれない。手塚治虫さんが漫画家になりたい人に言った言葉と同じになってしまうが、仕方ないのだ。
 とにかく、私は、こういう意欲もあり実力もある若者差別の政策がどうしても我慢ならないのだ。他の分野についても言えるだろう。

 確かに、今の公務員は効率が悪い。しかし、それは、効率というものについて真剣に学習・研究していないからだ(図書館にはそういう資料が山のようにあるのに)。そして、自分たち自身の効率を上げることを放棄して、安易に民間委託などを言いすぎる。民間委託の場合、安い不安定労働者によって支えられるので、人件費が圧縮され、その分では「効率」がよくなるのは当然なのである。しかし、その支える人々は、どんなに素晴らしい人でも捨てられるのである。
 さらに言えば、その民間企業でさえ、人件費以外の面では、たいして効率は良くない。仕事そのものの革新はほとんどない。

 もっとも悪徳なのは、NPOを標榜しながら、実際には、最低賃金法以下の「賃金」で図書館のスタッフを調達しているところだ。群馬県の太田市などである。もちろん、建て前は、ボランティアだから、「賃金」ではないので、具体的な問題にはされていない。なんでも1時間500円くらいしかもらっていないようだ。ところが、市役所自体で、これが「雇用」の創出になっているかのように言っている人がいるらしい。これでは、まるでやくざではないか。これが私の思い込みや脳内妄想、勘違いであることを望む。

 勝手に「聖域」扱いされている行政・公共サービス分野は、これからやくざまがいの企業への第2の公共事業となるだろう。結局、汚い公共事業は根絶されていないのだ。まともな企業の方なら知っているはずだ。もはや、日本は盗賊に占領されつつある。ロシアのことをああだこうだ言えなくなる日も近いだろう。

 とりあえず、再反論の1。


| | コメント (1) | トラックバック (2)