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2006年12月22日 (金)

図書館の「民営化」という馬鹿馬鹿しさ

 公立図書館への委託や指定管理者制度の導入が流行っている。
 こういう民間信仰に基づく民間療法が流行っている。

 図書館というものは、もともと、誰がやってもよいもので、営利でやろうとそれも勝手だ。個人だろうと民間だろうとできる。それでお金もうけをしても悪くはない。もともと規制など存在しない。

 しかし、公立図書館、つまり、自治体が設置する図書館についてはサービスの対価をとってはならない(無料であること)が定められている。もっともこれは、金がかからないことを意味するわけではない。要するに税を中心としたものでまかなうことが述べられ、それは、受益者負担ではなく、サービス自体が公共財であり、所得の再分配機能を担うことを示している。なぜなら、図書館サービスは仮に利用しない人がいたり、また、利用度に差があったにしても、自分が利用しなかったことについても、自分にも公益がまわってくることがあるからである。平たく言えば、自分が読んでもとうてい、わからないような高度に科学的な本であっても、それを税金で購入し、そういうものを学習したいと言う人があまり高価なので自分で買いきれないなどと言う場合に、その人が図書館からそれを無料で借り、たくさん勉強した成果として、その科学の分野に寄与したり、また、それを応用した製品や商品などをつくったりして、社会に還元すれば、図書館サービスはただ消費されたのではなく、有効に投資されたこととなり、その本を読まなかった自分にも便益がめぐりめぐってくるということである。

 つまり、図書館が無料であるのは、ばらまき福祉ではなく、より大きな公益のためであり、図書館という存在が非常に公共性の高いものであるとの認識からなのである。

 それで、概念上、区別されうる公立図書館と公共図書館が一致した存在としての図書館が非常に大きな意義を持つのである。

 そういう「公立」「公共」の図書館をわざわざ「民営化」するというのは、その本質自体を殺すことになるので、自殺行為である。これは、公立公共図書館を潰すということと同義である。

 民営でやりたいなら、私立または企業体で、何も公共性など考えずに利益になるターゲットに絞って営業すればよい。

 公立公共図書館では、それではできないこと、また、それでは、公益として社会にフィードバックできないことを行うのである。

 国鉄民営化を思い出して欲しい。国鉄民営化などという前から、私鉄はあった。民間の事業で成り立つなら私鉄で行えばよいのである。国鉄の借金は結局、国民が払わされて、しかも、JRになってかなり廃線になった。結局、民営化じゃなくて、廃止なのである。これからも第3セクターになったところなど危ないだろうし、さらに廃線になるところも出てくると思う。

 鉄道を勝手に過去のものとしてしまったが、その選択は本当に正しかったのだろうか? 酒も飲めない、歳をとったり、体が不自由になれば容易に運転できず、また、自分が家族をのっけて運転する立場なら、多くの自分の時間や空間の自由が奪われる自動車が本当にそんなに便利か?

 図書館をなくして、すべてインターネットにすれば、それは本当に便利になるだろうか? そもそもそこまで便利なインターネットのネタはどうやってつくるんですか? ここまで図書館を愚弄した国はやがて滅びるだろう。アレクサンドリアの大図書館を雲散霧消させてしまった国が滅んでしまったように。

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コメント

プリオンとやらのトラックバック、本当にプリオンなので面白いので載せました。
 本をあまり読まない人は、こういうプリオンになるから本当にいやだ。

投稿: ほどよい司書 | 2006年12月23日 (土) 20時15分

公共性も考え、さらにサービス向上を常に考える民営の力と言うものがある。既成概念を基に公共性を言うあまり硬直化し怠惰になった公共施設は無惨なもの。公共性を言うあまりに赤字を垂れ流し税金を無駄に使う公共施設も悲惨です。あなたのような先入観で時代遅れの民営化・規制緩和を阻止するような思想を、ぶち壊す必要がこの国には未だいっぱいあるようです。…と古い記事に文句を言ってもしょうがないか。今は規制緩和の時代にようやく入りました!

投稿: 既成概念破壊者 | 2013年5月 5日 (日) 22時05分

 民間が公共性を考えだしたら、収益をあげることは難しいですよ。私は、民間の事業を否定しているのではなく、民間は民間でやり、公は公でやるという、公私のけじめをはっきりつけろと言っているだけです。
 民間で図書館やるならどうぞやってください。NPO立や私立の図書館もすでにあります。しかし、公立図書館はしっかりと自治体がやるべきです。中途半端はいけません。
 規制緩和もなにも、民間で図書館をやることについて、もともと何の規制もありません。私立学校ほどの規制さえありません。何人も自由に民間の図書館を作れます。それを指定管理だの委託だので公にたかるのはよしてください。

投稿: 思い込み破壊者 | 2013年5月10日 (金) 00時11分

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» 図書館の「公共性」という馬鹿馬鹿しさ [Д)A)電脳プリオンの日記]
http://moderate.cocolog-nifty.com/hodoyoi/2006/12/post_11bf.html  しかし、公立図書館、つまり、自治体が設置する図書館についてはサービスの対価をとってはならない(無料であること)が定められている。もっともこれは、金がかからないことを意味するわけではない。... [続きを読む]

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